どらごにっくないと

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迷うメイドさん【その1】

  • 2008-06-30T10:57:11
  • 高原恵ライター
●オープニング【0】
 夕方になって間もない白山羊亭。そこに3人のメイドさんたちが現れた。1人は小柄で胸の大きな猫耳メイドさん、もう1人は細身で背の高いエルフのメイドさん、最後の1人は三つ編みで眼鏡をかけたメイドさんだった。
「あのですにゃー、お願いがあるんですけどにゃー」
 白山羊亭の看板娘・ルディアに猫耳メイドさんが声をかけた。
「私たち、ご主人様の言い付けで、明日隣のミュートの街まで、お届けものを持っていかなくてはならないんです」
 そう説明したのはエルフのメイドさん。ちなみにミュートの街へは半日もかからない。
「それで、あの……その……私たち3人だけで行くのは心配なので、どなたかご一緒していただけると嬉しいのですけれど……」
 眼鏡っ娘メイドさんがもじもじしつつ、白山羊亭へやってきた理由を説明した。それを聞き、数人の冒険者が一緒に行ってもいいと言った。喜ぶ3人のメイドさんたち。
「では明日の朝、お願いしますにゃー」
 深々と頭を下げ、店を後にしようとするメイドさんたち。
 あのー……そっちは入口じゃなくて、店の奥なんですけどー。ひょっとして……3人揃って方向音痴ですか?

●前途多難?【2A】
 朝早く、エルザードの街の門のそば――。
「けしからないザマス!」
 バ国メイド隊の隊長(兼メイド長)であるエル・リッテンマイヤーは不機嫌な顔付きで腕を組んでいた。メイド長であるためその服装も大きなリボンのついたメイド服である。しかし……エルは背丈240センチもあるジャイアントであった。そばを通り過ぎる者が、例外なくエルの方に振り返っていた。
「すみません……」
 エルの前でエルフのメイドさん、ユウミがしゅんとしていた。
「約束の時間にも関わらず、3人のうち1人しか現れていないとは、メイドという仕事を何と心得ているザマスか?」
 エルにこんこんと説教されるユウミ。その様子をパラの旅芸人であるナトリ・ウェザリーと、エルフのヴィジョンコーラーであるレティフィーナ・メルストリープが困惑した表情で見ていた。
「まさかここまで方向音痴がひどいとは思わなかったなあ」
「3人一緒に出て、どうしてここに辿り着いた時に1人なのかしら?」
 ユウミによると、3人一緒に屋敷を出たとのことだが、途中で紆余曲折があり、何故か1人で着いてしまったということだった。
「多額な報酬を用意していたのなら、それで馬車でも雇って3人には荷台で大人しくしてもらえればいいだけの話なんですけれど」
 レティフィーナが溜息混じりに言った。別にレティフィーナは報酬目的ではない。方向音痴な3人を見ていられなかったがゆえの、純粋な気持ちであった。だが、実際にお金が用意されていたのであれば、馬車を使うのが一番安全で確実な方法であることは間違いなかった。
 しかしユウミの話では、3人の給金の中から些少の礼金を捻出するとのことだった。つまりお金がないため馬車は使えない。
「半日くらいですから、無償でもいいのですけれど……わたくしは」
「確かにあの3人から、報酬を受け取るのは悪い気がするけどね」
 レティフィーナの言葉にナトリが答えた。
「にしても、他の2人は……あ、来たようだよ」
 周囲を見回したナトリが何かを見つけた。
「たく、初っ端からこれかよ……」
 ぶつぶつと言いながら、この場に現れたのはラルラドール・レッドリバー。猫耳メイドさんのマオの襟元をむんずとつかんだまま、ずるずると引きずるようにやって来た。
「もう大丈夫にゃー! 迷わないにゃー!」
 両手をじたばたとさせて抗議するマオだったが、ラルラドールは一切無視を決め込んだ。
「ほらよ、連れてきたぜ。こいつ、近くの路地で猫と遊んでやがった」
 呆れ顔のラルラドール。連れてゆく前に一騒動あったのか、手の甲に引っ掻かれた痕があった。
「来たザマスね! あなたにもさっそく話があるザマス!」
 マオの姿を発見し、エルがぎろりと睨み付けた。たじろぐマオ。
「だ……誰にゃ、おばさんは?」
「年長者に対し、何たる口のきき方ザマス! そもそもあなたはメイドなる仕事に対し……」
 今度はマオ相手にエルの説教が始まった。矛先が逸れたためか、ユウミの顔に安堵の表情が浮かんでいた。
「あと1人……」
 今度はレティフィーナが周囲を見回した。すると、眼鏡っ娘メイドさんであるカオルが3人の男性に付き添われるようにしてこちらにやってきた。うち2人の顔にはレティフィーナは見覚えがある。
「泣いている……のかな?」
 カオルの様子を見てつぶやくナトリ。カオルはどうやら泣いているようであった。
「どうやら間に合ったようですね」
 女性と見間違う程の綺麗な顔立ちをした青年、湖碧風がにこりと微笑みを浮かべた。
「どうしたんだ? そいつ、泣いてるようだけど……」
 カオルの妙な様子に、ラルラドールが尋ねた。それに対し答えたのは学者のスイ・マーナオだった。
「道に迷って妙な奴らに絡まれている所を、通りがかった俺たちが助けたんだ。な、飛炎?」
 スイはそう言って顔を見上げた。紅い髪の青年、紅飛炎は不機嫌な表情のままで小さく頷いた。
「僕たちが遅く出てきたから、ちょうどそこに遭遇したんだよ。怪我の功名と言うのかな……寝起きの悪過ぎる鳥のおかげだよね」
 碧風がにっこりと微笑んだまま飛炎を見た。ますます不機嫌になる飛炎。そのやり取りを聞きながら、スイは苦笑していた。
「これで3人揃ったザマスね。しかし、見ているとメイドとしてあまりにも不甲斐ないザマス! ミュートまでの道すがら、わたくしがあなたがたに正しいメイドについての心得を教えて差し上げるザマス!」
 エルがマオ・ユウミ・カオルの3人をびしびしと指差して言った。
「久々に鍛え甲斐のあるメイドたちザマス……」
「この分じゃ、道中退屈だけはせずに済みそうだな」
 やる気満々のエルを見て、スイが言った。
 ともあれ総勢10人となった一行は、予定より少し遅れながらもエルザードを出発した――。

●出発【3】
 出発してすぐ、ラルラドールは3人のメイドさんに各々笛を渡していた。
「万一迷子になった時には、これで場所を教えるようにな。言っとくが、俺たちのそばを絶対に離れるんじゃねぇぞ」
 強く3人に言うラルラドール。3人はこくこくと頷いたが、マオだけはさっそく受け取った笛を吹き始めた。
「面白いにゃー☆」
「だーっ! だから迷子になった時だって言ってるじゃねぇか!」
 何度も繰り返し笛を吹くマオに対し、ラルラドールの注意が飛んだ。
「それにしても、皆が報酬二の次でよかった……」
 安心したようにつぶやくレティフィーナ。皆の話を聞いていると、報酬うんぬんよりも3人が気になったのが先に立っているようで、好意・善意が先にある感じを受けていた。もし高い報酬を要求するような者が居たなら、真っ先にそういう者に対してこの依頼を断るように勧めていた所だろう。
「おい……どうして俺の方が、割合が高いんだ」
 ぎろりと碧風を睨みつつ、飛炎が小声で言った。その肩には自分の荷物のみならず、3人の荷物の一部までもが載っていた。もちろん飛炎だけが持っている訳ではないが、手分けして荷物を持っている者の中で、飛炎の持つ荷物の割合が一番高かった。
「第一、朝が早いのもだな……」
「へぇ〜。君はこんなにも困っている彼女たちを前にして、手伝う気なんてこれっぽっちもないんだ」
 ぶつくさと文句を言う飛炎に対し、碧風はにっこり笑顔と共に嫌味混じりの言葉で切り返した。そう言われてしまっては返す言葉のなく、再び飛炎は押し黙った。
「そういえば、何が入ってるんだ?」
 スイがカオルに尋ねた。スイの肩にも荷物の一部が載っていた。袋の上から感じる感触は、角があってやや重い。
「あ……あの、その、書物です。ご主人様が借り受けていた書物を、今回お返しに伺おうと……」
「書物か」
 学者であるスイには興味深い中身である。
「にゃーっ、面白いにゃーっ☆」
「だーっ! だから普段は吹くなって言ってるじゃねぇか!」
 怒られても怒られても笛を吹くマオに対し、数回目になるラルラドールの注意が飛んだ。

●道中様々【4A】
 ミュートへの道中は穏やかな物であった……一応は。
 道中では3人のメイドさんに対し、エルによるメイドさんの心得なる物の講義が行われていた。ちなみに講義の対象は3人でも、それを聞いているのはこの場に居る全員であるのだが。
「いいザマスか? いざというときに主を守る最後の盾として勇敢に戦うのが真のメイドザマス。もちろん平時はそのことを微塵にも匂わさずに行動しなければいけないザマス」
 このようなことを始め、様々な内容を3人に教えてゆくエル。あらかた話をしたらまた最初から、その繰り返し。気が付くと、スイが空でメイドさんの心得を唱えられるようになっていたというのは余談である。
 マオは何か興味のある物を見つける度に姿を消していた。当然迷子になるので笛を吹き、ラルラドールがその場へ駆け付ける。もちろんその度にラルラドールは叱っていてマオも謝るのだが、何故かマオは同じことを繰り返していた。
「痛々しいですわ……」
 ぜーはーと肩で息をしつつマオを連れ戻すラルラドールの姿を見る度に、レティフィーナはそんなことを思っていた。ラルラドールのストレスと怒りの度合が上がってゆくのが見ていて感じ取れたからだ。
 カオルはというと、ナトリとレティフィーナが後ろに居たからか、一行から離れかけるとすぐに2人が連れ戻していたために大事には至らなかった。
 ユウミはというと、碧風がちょくちょく話しかけていたせいもあってか、皆から離れることもなく普通に道中を過ごしていた。どうやら朝の件と合わせて考えるに、ユウミの方向音痴が一番ましなようである。
 ちなみに飛炎はというと、1人黙々と荷物を持って歩いていた。途中でマオが転んだために、溜息を吐きつつ助け起こす。だがその際、不意にマオの大きな胸に手が触れて動揺していた。碧風はその様子を見ていたが、何故か何も言わなかった。
「ん……?」
 ナトリは途中で数回足を止め、何度も後方を振り返っていた。
「どうしたんです?」
「いや……気のせいだと思うんだけど」
 レティフィーナの問いかけに言葉を濁すナトリ。
(どうも、覚えのある視線がさっきからしているような気がするんだけどなあ)
 何にせよ、一行はミュートまでの距離を着実に減らしていた。

●昼食【5A】
 ミュートまでの道中も半分以上過ぎた所で、一行は昼食を取ることにした。途中で少しずつ休憩は取っていたのだが、本格的な休憩はこれが初めてである。
 前もって準備をしていたのか、碧風がお手製の豪華な昼食を荷物の中より出してきた。もちろん人数分ある。
 美味しい昼食と紅茶に舌鼓を打ちながら、談笑する一行。穏やかな時間が流れていた。
「見ていて思ったけどな」
 スイがそう切り出して、3人のメイドさんたちの顔を見回した。
「方向音痴なのは3人各々に何かしら原因があるはずだ。とりあえず1つだけ分かったんで言っとくがな、マオは好奇心を抑えろ」
 一瞬の沈黙。そして爆笑が起こった。方向音痴の原因は別にあるにせよ、マオの場合は好奇心がそれに輪をかける要因となっていることをここまでの道中でスイは見抜いたのだ。
「何でにゃー! 好奇心は自然なことなのにゃー! 労働基準法にも明記されているのにゃー!」
 最後の言葉は全くもって意味不明だが、マオは頬を膨らませてスイに抗議した。
「……先程の詫びだ」
 飛炎がすくっと立ち上がり、マオを背後から抱きかかえた。
「にゃっ!?」
 驚くマオをよそに、飛炎は背中より翼を露にしてマオを抱きかかえたまま飛行した。
「にゃーっ! 凄いにゃ、凄いにゃーっ!!」
 マオの感嘆する声が辺りに響き渡った。すぐに飛炎は降りてきたが、マオの機嫌を直すには十分であったようだ。
「あ、あの……先程話されていた、朝のポージング体操というのはどのような物なんですか……?」
 カオルがこわごわとエルに尋ねた。
「教えてほしいザマスか?」
 エルが3人に意志の確認をした。顔を見合わせて頷く3人。
「よろしいザマス。自主的に物事を教わろうとするのはよい傾向ザマス。わたくしが直々に鍛えてあげるザマス!」
 エルは立ち上がると、3人を引き連れて少し離れた場所へ向かった。
「よいザマスか? 最初は手をこう……」
 エルがポーズを取り、3人がそれを真似てゆく。何と説明すればいいのだろう、それは本当に独特な体操であった。
「……バ国とやらでは、あのような体操が行われているんですか?」
「いや、俺に聞かれても……」
 レティフィーナの質問に対し、ラルラドールは困惑した表情で答えた。答えようがない質問である。
「気付いてるか?」
 飛炎がぼそっとつぶやいた。
「まあ一応は。……こっちの様子を窺ってるようだよね」
 紅茶を飲みながら碧風が頷いた。
「そうか、俺もさっきから妙だなとは思ってたんだ。気のせいじゃなかったんだな」
 そう言ったのはラルラドールだった。
「じゃあ、このまま普通に話している振りを続けた方がいいね」
 笑顔で語るナトリ。3人の会話でおおよその事態は把握できていた。恐らく――敵意ある何者かが近くに居るのだと。
「蹴散らしてやればいいよなー」
 嬉々としてスイが言った。そこに、ポージング体操の講義を終えたエルと3人が戻ってきた。
「そろそろ休憩を終えて、先を急ぎましょうか」
 レティフィーナがエルと3人に声をかけた。笑顔であるが、その表情には若干の緊張が含まれていた。

●山賊たちの勘違い【6】
「悪いこたぁ言わねぇ。荷物と有り金を全部置いてゆきな」
 いかにも悪人といった面構えの体格のいい男が、一行にそう言い放つ。
 一行が休憩を終え、出発しようとした矢先の出来事であった。山賊風の男たちが、一行の周囲を取り囲んだのは。
「冒険者がそんなに居るんだ。さぞかし価値のあるもん持ってるんだろ?」
 首領格の男がそう言うのを聞き、ナトリはピンときた。
「そうか、こんなに冒険者が揃ってるから、不自然に見えたのか」
 小声でつぶやくナトリ。確かにメイドさん3人に対し、冒険者7人というのは不自然な図である。何か重要な物を護っているように見えてもおかしくはない。
「断るザマス! 山賊のような無礼かつ野蛮な輩に渡すような物はチリ1つないザマス!」
 エルがきっぱりと言い放った。メイドさんたち3人は、エルの背後に隠れるようにして立っている。
「何だとぉ……? なら、これだけの人数を相手にしようって言うんだな?」
 脅しをかける首領格の男。だがスイが挑発気味に答えた。
「これだけの人数だろ? 他愛ねぇな」
「なっ……何だとぉっ!?」
 首領格の男は怒りで顔を真っ赤にした。
「おい、てめえら! こいつら皆殺しにしちまえっ!!」
 首領格の男の号令と共に、山賊たちが一斉に襲いかかってきた。
「うっぷん晴らさせてもらうぜ!!」
 マオの相手でよっぽどストレスが溜まっていたのだろう、ラルラドールは山賊たちの攻撃を巧みにかわすと、ギャロットを使い次々に山賊たちを落としていった。
「よーく見ておくザマス! このように、メイドは戦えなくてはいけないザマス!!」
 そう叫びながら、エルは襲いかかってくる山賊たちを次々に拳で沈めていった。
「よそ見するんじゃねぇよ!」
 スイが片っ端から山賊にキックを浴びせかける。そしてよろめいた所に飛炎の剣が来るというパターンがいつの間にか確立していた。
 ナトリと碧風とレティフィーナは、メイドさんたち3人を山賊たちの手から守っていた。ナトリがジュエルを組み合わせて『スリープ』をかけ、レティフィーナはパピヨンのヴィジョンであるフェステリスを召喚し山賊たちの集中力を乱してゆく。碧風は2人の攻撃を擦り抜けてきた山賊たちを、カウンターで葬っていた。
 見る見るうちに形勢が悪くなる山賊たち。気付けば首領格の男と数人を残すのみとなってしまった。
「きゃあっ……」
 山賊が倒れ込んできたのをよけたためか、不意にカオルがよろめいて一行から離れた。首領格の男はその一瞬を見逃さず、カオルの腕をぐいっとつかんで引き寄せた。

●効果なし【7】
「おうっ、こっちを見ろ!!」
 首領格の男が叫んだのと、山賊たちの最後の1人を倒したのはほぼ同時だった。
「この女の生命が惜しけりゃ、妙な真似はよしやがれ!!」
 見ると首領格の男は、カオルの首筋にナイフを突き付けていた。
「ひぃ……」
 怯えた表情を浮かべ、涙を流すカオル。
「何するにゃー!」
 マオがカオルを助けに行こうとするが、ラルラドールに襟元をつかまれて阻止された。
「何するにゃー!」
 じたばたしつつ抗議するマオ。
「へへ……荷物を置いて、こっから立ち去りな……」
 形勢逆転と見たか、首領格の男は強気になってきた。
「あっ……!」
 ユウミが何かに気付いたが、碧風がその口を手で塞いだ。同様にマオの口もラルラドールが塞いでいた。
「どうした! 早く立ち去れと言ってるだろう!!」
 首領格の男が叫ぶが、一行は全く動く素振りを見せない。スイとラルラドールはニヤニヤと笑っているし、レティフィーナは安堵の表情を浮かべている。エルと飛炎は腕を組んだままだし、ナトリと碧風に至っては笑みを浮かべていた。
「何だ、何だ! その態度は……ふざけてんのかっ! この女の生命が惜しくないってんだな!」
 首領格の男は顔を真っ赤にして叫んだ。その瞬間、首筋に冷たい物が当たる感触があった。
「生命が惜しくないのは……貴様もだな」
 首領格の男の背後で女性の声がした。エルフの女性騎士、ウィリアム・ガードナーが男の首筋に剣先を当てていたのだ。
「覚えのある視線だと思ったんだ」
 ウィリアムの姿を見て、ナトリがにこやかに言った。ナトリはウィリアムと知り合いであるのだ。
 首領格の男? もちろん即座に両手を上げて降伏をした――。

●感謝感謝【8】
 一行は近くの村に立ち寄り、捕まえた山賊たちの見張りを頼むと、ミュートへと急いだ。その間にウィリアムは、気になって一行の後を追っていたことを説明していた。
 その後は特にトラブルも起こらず、無事にミュートに到着した。辺りはもう夕方になっていた。
 とある屋敷へ向かい、用事を済ませた3人のメイドさんたちが、一旦皆の待っている外へ出てきた。
「皆さん、どうもありがとうございました」
 ユウミがそう言って深々と頭を下げた。マオとカオルもそれに倣う。
「帰りはこちらの方のご好意で馬車を出していただけるとのことですので、せっかくでるからお世話になろうかと思います」
「それが安全確実ですね」
 レティフィーナが笑顔で言った。そういう手段が使えるのなら、そちらを使う方がいい。
「あの……その、助けていただいてありがとうございました!」
 カオルが再度頭を下げる。
「礼には及ばないザマス。しかし、3人とも戦えるようになっておいた方がよいザマス。今回のようなことが、いつ何時起こらないとも限らないのザマスから」
「分かったにゃー、何はなくとも朝はあの体操から始めるのにゃー☆」
 エルの言葉に対し、マオが元気よく言った。
「心意気はよいザマス。機会があれば、またわたくしが直々に鍛えてあげるザマス。それまで腕を磨くといいザマス」
 満足そうにエルが頷いた。
「それでは……どうもありがとうございました!」
 3人はまたもや深々と頭を下げると、屋敷の中へ消えていった。ちなみに礼金はすでに渡されていた。
「さーてと、後は詰め所に山賊のことを報告して、引っ張ってきてもらうだけだな」
 大きく伸びをしてラルラドールが言った。
「恐らくだが、多少なりとも報償金は出るかもしれない」
「だろうね。あの分じゃ、他にも色々とやってそうだし」
 ウィリアムの言葉をナトリが補足した。
「実質はそれが礼金だな」
 スイの言葉に、皆が一斉に頷いた。
「そういえば、ずっと言い忘れてたんだけど」
 碧風が飛炎の目をじっと見つめた。
「何だ?」
「飛炎ってやっぱり胸の大きい娘が好みなんだ」
 にっこりと笑顔で告げる碧風。
「ど? ど、ど、ど……」
 動揺する飛炎。それでも何とか我に返り、碧風に詰め寄った。
「やっぱりってどういうことなんだ!」
 だがその飛炎の言葉も虚しく、碧風の無言の笑みであっさりとかわされてしまった。
 そのやり取りを見ていた他の者たちの笑い声が辺りに響いていた。

【迷うメイドさん【その1】 おしまい】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名 / 性別 
             / 種族 / 年齢 / クラス 】
【 5565 / ラルラドール・レッドリバー / 男 
           / ヒュムノス / 21 / 戦士 】☆
【 2216 / エル・リッテンマイヤー / 女
         / ジャイアント / 48 / 専門家 】○
【 0829 / ナトリ・ウェザリー / 男
             / パラ / 32 / 旅芸人 】○
【 6314 / レティフィーナ・メルストリープ / 女
      / エルフ / 19 / ヴィジョンコーラー 】☆
【 0129 / 湖 碧風 / 男
         / 白虎族 / 518 / 次代の族長 】◇
【 0093 / スイ・マーナオ / 男
              / 人間 / 29 / 学者 】◇
【 0128 / 紅 飛炎 / 男
            / 朱雀族 / 772 / 族長 】◇
【 0698 / ウィリアム・ガードナー / 女
             / エルフ / 24 / 騎士 】○


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■         ライター通信          ■
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・『白山羊亭冒険記』へのご参加ありがとうございます。担当ライターの高原恵です。
・高原は原則としてPCを名でで表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・参加者一覧についているマークは、☆がMT12、○がMT13、◇がソーンの各PCであることを意味します。
・なお、この冒険の文章は(オープニングを除き)全11場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通されると、全体像がより見えてくるかもしれませんよ。
・お待たせしました、妙なメイドさん3人が出てくる冒険をお届けします。猫耳にエルフに眼鏡っ娘、ある意味協力な組み合わせかもしれませんが……何故この3人なのか、深くは追求しないでください。
・今回の冒険、本来なら戦闘は起こらないはずだったんですが、色々と判定を行った結果このようなことになりました。プレイングを受けて戦闘が起こった訳ではありませんので、誤解のなきようお願いします。
・このシリーズ、気が向いたらちょくちょく出す予定ですので、たまに白山羊亭を覗いてみるのも面白いかもしれませんよ。
・ラルラドール・レッドリバーさん、3度目のご参加ありがとうございます。マオに振り回された感がありますね。泣きはされなかったのでまだよかったかもしれませんが。笛を持たせたのはよかったと思います。持たせてなかったら、ミュート到着はもっと遅くなっていたかと。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また別の冒険でお会いできることを願って。
COPYRIGHT © 2008-2024 高原恵ライター. ALL RIGHTS RESERVED.
この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。
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