温泉へ行こう☆
- 2008-06-30T13:16:11
- 高原恵ライター
●オープニング【0】
「お客さん、ご存知ですか? ここから少し行った南の村に、温泉があるんですよ〜☆」
白山羊亭の看板娘・ルディアが楽しそうに話しかけてきた。そういえば聞いたことがある。森近くの村にいい温泉があると。確か村の名前はハルフだったか?
「露天風呂はもちろん、他にもいくつかあるらしくて、行かれた方の話だとなかなかよかったらしいですよ」
どうやら温泉の評判は上々らしい。ならば話の種に、1度は行ってきてもいいかもしれない。そう思い始めた時、ルディアが思い出したように付け加えた。
「あっ、温泉ですけど、混浴の所もあるらしいですから、入る時には気を付けてくださいね」
なるほど……間違えて入ると、一騒動起こりそうだ。気を付けなければなるまい。
「新しい住人の方も増えたようですし、親睦を深めるためにも温泉はいいと思いますよ〜☆」
知り合いと一緒に行くもよし、見知らぬ相手と語り合うもよし、単に1人でのんびりしてくるのもよさそうだ。とりあえず、どんな温泉に入って何をしてくるか、ある程度は決めておこうか――。
●凸凹コンビ【1B】
「温泉温泉〜♪ 思いっきり羽伸ばすぞー♪」
そう言ってシフールの女の子、カファール・テンペストは大きく背伸びをした。もっとも、シフールだからさほど変わりはないのだが。
「カファ……俺の肩で何やってるんだ?」
ムスッとした表情でラルラドール・レッドリバーがつぶやいた。足元まである赤く長い髪が歩く度に揺れていた。面白いことにカファールも似たような容姿で、まるでラルラドールの縮小版であった。カファールの言葉を借りれば『ラルりんがおいらの拡大版なんだよ』ということになるようだけれども。
「背伸びだよ〜」
明るく答えるカファール。ラルラドールの肩の上に乗ったままで。
「温泉温泉〜♪ 思いっきり羽伸ばすぞー♪」
先程の台詞を繰り返すカファール。調子に乗ってか、今度は踊り出した。
「ったく、てめえ! 大人しくしてないと、払い落とすぞ!」
これにはさすがにラルラドールも怒った。叱られ、ぴたっと踊りを止めるカファール。
「ラルりん、そんなに怒らないでよ〜。一緒に温泉行くんだしー」
カファールとラルラドールは、ハルフ村に向かうため街道を歩いていた。正確には歩いているのはラルラドールだけで、カファールはその肩にちょこんと乗っているのだけれど。
目的は先程から何度もカファールが言っているように温泉に入るためだ。何しろ2人の居るフレイアースは砂漠の世界。たっぷりの湯に浸かる機会など滅多にない。それゆえに、カファールはもちろん、ラルラドールも内心では喜んでいた。
「温泉といえば、卵〜、お饅頭〜、美味しいもの一杯食べられるんだよね〜☆」
再び踊り出すカファール。温泉以上に食べ物の方に興味があるようだ。
「だーっ、だから踊るなっ!」
再びラルラドールが叱った。
●ハルフ村【2】
森近くにあるハルフ村に着くと、日はだいぶ傾いていた。夕暮れも間もなくのようだ。
村に入ってすぐ気付くのは、立ち上る湯煙と独特の温泉の匂いだ。温泉に来たのだという気分が高まってくる。
村人に尋ねた所、温泉が見つかったことで村を訪れる者が急増したそうだ。急ピッチで施設を整え、旅人を迎える態勢を作り上げたハルフ村。この分なら、数年後には街と呼ばれるくらいまで発展しているかもしれない。
しかしそんな数年後の話は別にいい。とりあえず現在だ。村人に宿の場所を教えてもらい、すぐにそちらへ向かった。
●一糸まとわぬ【3C】
「温泉、温泉〜♪」
露天風呂でばしゃばしゃと羽と手足をばたつかせるシフールのカファール。他の者の目が、カファールに集中していた。正確にはカファールを手に乗せている、スフィンクスのヴィジョンの方に。
シフールゆえに普通に湯舟に入ると沈んでしまう。そこで一計を案じたカファールは、自らのヴィジョン『双貌の月 アステリオン』を召還して、このようにして湯舟に入ることにしたのだ。他人の視線を考えなければ、まあ有効な手段ではある。
シフールを手に乗せるスフィンクスのヴィジョンという、普段はあまり見ることのできないそんな光景を、そばでスケッチしている女性が居た。アリアである。
集中し絵を描くアリア。先程までは風景を描いていたのだが、描き終わってすぐにこの光景に気付き、再び描き始めたのだった。
それは別に構わない。問題はその格好だ。アリアはタオルも巻かずに入ってきていた。つまり生まれたままの姿である。ここが女湯でなければ、男性の視線を一身に浴びることになっていただろう。
やがて時間になり、ヴィジョンはカードへと戻ってゆく。と同時に、カファールの姿が湯舟の中に沈んだ。慌てて羽を動かして、舞い上がるカファール。
「はうー、溺れるとこだった〜」
カファールは額の汗を拭った。こちらは小さいながらもタオルを身体に巻き付けていた。
「ねえねえ、アリりん何やってるのー?」
アリアのそばへ飛んでゆき、くるくるとアリアの頭上を飛び回るカファール。ちゃっかりアリアと仲良くなっていた。
「カファールさんを描いている所で……あれ?」
スケッチブックから顔を上げ、アリアが目をぱちくりとさせた。描いていたはずのカファールたちの姿が、そこに見当たらなかったからだ。
「おいらはここだよ〜」
カファールはアリアの目前へ回り込み、くすくすと笑った。
●ヴィジョン大決戦・完全版【4B】
エルフの男、イリアスはまだ男湯で温泉を酒樽に詰めていた。飲用の分も別にきちんと必要数確保し、十分過ぎる量を馬車に積み終えて。
「よーし、こんなもんやろ。ドレーク、お疲れはん」
ヴィジョンをカードに戻し、大きく息を吐くイリアス。一仕事終えた後の充実感は大きい。
(飲用は街へ持って帰ったその足で、売りに回った方がええやろな。味が落ちたら何やし、相手に足元見られるのもかなわんしな) 心の中であれこれ算段するイリアス。本当に、根っからの商売人である。
「わ〜、こっちの方が広いねー☆」
その声に算段を中断し、振り向くイリアス。いつの間にかシフールが1人、男湯に飛び回っていた。
「うん、何や?」
思わずシフールに声をかけるイリアス。シフールは飛び回るのを止めて、イリアスに答えた。
「ナンヤじゃないよ、おいらカファールだよ」
両手を腰に当てて胸を張るカファール。
「そうか、カファールさんか。わいはイリアス言うんや」
「んじゃ、イリりんだね☆」
ニパッと笑うカファール。
「ねえねえ、イリりん。おいら『隠れた名盗』さん探してるんだけど、どこに居るか知らない?」
「はあ? 『隠れた名湯』やと分かるけど、その言い方やったら人やろなあ? 悪い、わいは分からんわ」
イリアスはそう言って、頭をぽりぽりと掻いた。
「そっかー、なら仕方ないね」
しゅんとするカファール。
「カファールさん、どこですか〜」
男湯の外から女性の声が聞こえてくると、カファールの顔がぱっと明るくなった。
「あっ、アリりんだ☆ アリりん、おいらはこっちだよー!」
叫ぶカファール。どうやらカファールの仲間が向こうに居るらしい。
「アリりんて、仲間のシフールなんか?」
尋ねるイリアス。カファールが首を横に振って今から答えようとした時、湯煙の向こうから人影が見えた。シフールではない、人間の女性の姿だ。それも、一糸まとわぬ姿の。
「カファールさん、描きかけで飛んでいっちゃ駄目……」
スケッチブックを片手にカファールの後を追ってきたアリアと、元から男湯に居たイリアスの目が合った。
「きっ……」
アリアが一瞬息を吸った。イリアスの顔は強張っていた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
黄色い叫び声を上げ、湯舟へ飛び込むアリア。そしてどこからともなくカードを取り出し、エンジェルのヴィジョンを召喚した。
「ま、待ちいな! ここは男湯やっ! 話せば分かるっ!!」
「問答無用っ!!」
慌てふためくイリアスにエンジェルが襲いかかり……羽で往復ビンタをし始めた。
「うっ! ぶっ! はうっ! うわっ!」
呻き声を上げるイリアス。もちろんやられっぱなしという訳にはいかない。イリアスもドラゴンのヴィジョンを召喚し、エンジェルと対峙させた。
カファールが少し離れた場所で、そんな2人の様子をきょとんと見つめていた。
●原因を作ったのは【5A】
「遅いぞ、カファ」
温泉の出入口で待っていたラルラドールは、ようやく出てきたカファールにそう言い放った。
「ラルりん、顔赤いよ?」
ラルラドールを一目見て、カファールが言った。ラルラドールの身体は、温泉と酒との相乗効果でほかほかとしていた。顔だけでなく、浴衣から覗いている肌が全て赤い、
「ああ。ちょーっとのぼせたかもな」
額に手を当てるラルラドール。……酒のせいのような気がしないでもないのだが。
「ねえねえ、ラルりん。天使とドラゴンの大決戦って知ってる?」
カファールが無邪気に尋ねた。
「? 何だそりゃ?」
ラルラドールがきょとんとした表情を見せた。
この後食事に行った2人は、カファールの言葉を意味を教えられることになる。そしてその原因を作ったカファールは、ラルラドールにまたもや叱られるのであった――。
【温泉へ行こう☆ おしまい】
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【 整理番号 / PC名 / 性別
/ 種族 / 年齢 / クラス 】
【 7315 / カファール・テンペスト / 女
/ シフール / 18 / ヴィジョンコーラー 】
【 5565 / ラルラドール・レッドリバー / 男
/ ヒュムノス / 21 / 戦士 】
【 5583 / アリア・リメル / 女
/ ヒュムノス / 20 / ヴィジョンコーラー 】
【 7411 / イリアス・ファーレロン / 男
/ エルフ / 32 / ヴィジョンコーラー 】
【 7204 / メリッサ・ローズウッド / 女
/ エルフ / 23 / 風喚師 】
【 5423 / 天本・美優 / 女
/ 地球人 / 22 / 地球人 】
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■ ライター通信 ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
・『白山羊亭冒険記』へのご参加ありがとうございます。担当ライターの高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、この冒険の文章は(オープニングを除き)全12場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通されると、全体像がより見えてくるかもしれませんよ。
・『白山羊亭冒険記』では、高原は明るい冒険を出してゆこうかと思っています。温泉が登場する冒険は、これからも度々出てくるかもしれませんよ。
・今回は面白いことに、ファンシィウッズ・フレイアース・アクアシーズと各々2人ずつにくっきりと分かれていました。ですので構成時に多少考慮してみました。また、皆さんのOMCイラストに1度目を通してから書いております。
・今回のメインは温泉でしたので、温泉に入っている場面を中心に描いています。本文では触れられていない行動もあるかと思いますが、ほぼ問題なく行われていますのでご心配なく。
・カファール・テンペストさん、楽しいプレイングありがとうございました。プレイング中、顔文字で踊られていましたので、本文でも踊っています。今回カファールさんのプレイングで、色々と影響が出ています。
・それでは、また別の冒険でお会いできることを願って。
「お客さん、ご存知ですか? ここから少し行った南の村に、温泉があるんですよ〜☆」
白山羊亭の看板娘・ルディアが楽しそうに話しかけてきた。そういえば聞いたことがある。森近くの村にいい温泉があると。確か村の名前はハルフだったか?
「露天風呂はもちろん、他にもいくつかあるらしくて、行かれた方の話だとなかなかよかったらしいですよ」
どうやら温泉の評判は上々らしい。ならば話の種に、1度は行ってきてもいいかもしれない。そう思い始めた時、ルディアが思い出したように付け加えた。
「あっ、温泉ですけど、混浴の所もあるらしいですから、入る時には気を付けてくださいね」
なるほど……間違えて入ると、一騒動起こりそうだ。気を付けなければなるまい。
「新しい住人の方も増えたようですし、親睦を深めるためにも温泉はいいと思いますよ〜☆」
知り合いと一緒に行くもよし、見知らぬ相手と語り合うもよし、単に1人でのんびりしてくるのもよさそうだ。とりあえず、どんな温泉に入って何をしてくるか、ある程度は決めておこうか――。
●凸凹コンビ【1B】
「温泉温泉〜♪ 思いっきり羽伸ばすぞー♪」
そう言ってシフールの女の子、カファール・テンペストは大きく背伸びをした。もっとも、シフールだからさほど変わりはないのだが。
「カファ……俺の肩で何やってるんだ?」
ムスッとした表情でラルラドール・レッドリバーがつぶやいた。足元まである赤く長い髪が歩く度に揺れていた。面白いことにカファールも似たような容姿で、まるでラルラドールの縮小版であった。カファールの言葉を借りれば『ラルりんがおいらの拡大版なんだよ』ということになるようだけれども。
「背伸びだよ〜」
明るく答えるカファール。ラルラドールの肩の上に乗ったままで。
「温泉温泉〜♪ 思いっきり羽伸ばすぞー♪」
先程の台詞を繰り返すカファール。調子に乗ってか、今度は踊り出した。
「ったく、てめえ! 大人しくしてないと、払い落とすぞ!」
これにはさすがにラルラドールも怒った。叱られ、ぴたっと踊りを止めるカファール。
「ラルりん、そんなに怒らないでよ〜。一緒に温泉行くんだしー」
カファールとラルラドールは、ハルフ村に向かうため街道を歩いていた。正確には歩いているのはラルラドールだけで、カファールはその肩にちょこんと乗っているのだけれど。
目的は先程から何度もカファールが言っているように温泉に入るためだ。何しろ2人の居るフレイアースは砂漠の世界。たっぷりの湯に浸かる機会など滅多にない。それゆえに、カファールはもちろん、ラルラドールも内心では喜んでいた。
「温泉といえば、卵〜、お饅頭〜、美味しいもの一杯食べられるんだよね〜☆」
再び踊り出すカファール。温泉以上に食べ物の方に興味があるようだ。
「だーっ、だから踊るなっ!」
再びラルラドールが叱った。
●ハルフ村【2】
森近くにあるハルフ村に着くと、日はだいぶ傾いていた。夕暮れも間もなくのようだ。
村に入ってすぐ気付くのは、立ち上る湯煙と独特の温泉の匂いだ。温泉に来たのだという気分が高まってくる。
村人に尋ねた所、温泉が見つかったことで村を訪れる者が急増したそうだ。急ピッチで施設を整え、旅人を迎える態勢を作り上げたハルフ村。この分なら、数年後には街と呼ばれるくらいまで発展しているかもしれない。
しかしそんな数年後の話は別にいい。とりあえず現在だ。村人に宿の場所を教えてもらい、すぐにそちらへ向かった。
●一糸まとわぬ【3C】
「温泉、温泉〜♪」
露天風呂でばしゃばしゃと羽と手足をばたつかせるシフールのカファール。他の者の目が、カファールに集中していた。正確にはカファールを手に乗せている、スフィンクスのヴィジョンの方に。
シフールゆえに普通に湯舟に入ると沈んでしまう。そこで一計を案じたカファールは、自らのヴィジョン『双貌の月 アステリオン』を召還して、このようにして湯舟に入ることにしたのだ。他人の視線を考えなければ、まあ有効な手段ではある。
シフールを手に乗せるスフィンクスのヴィジョンという、普段はあまり見ることのできないそんな光景を、そばでスケッチしている女性が居た。アリアである。
集中し絵を描くアリア。先程までは風景を描いていたのだが、描き終わってすぐにこの光景に気付き、再び描き始めたのだった。
それは別に構わない。問題はその格好だ。アリアはタオルも巻かずに入ってきていた。つまり生まれたままの姿である。ここが女湯でなければ、男性の視線を一身に浴びることになっていただろう。
やがて時間になり、ヴィジョンはカードへと戻ってゆく。と同時に、カファールの姿が湯舟の中に沈んだ。慌てて羽を動かして、舞い上がるカファール。
「はうー、溺れるとこだった〜」
カファールは額の汗を拭った。こちらは小さいながらもタオルを身体に巻き付けていた。
「ねえねえ、アリりん何やってるのー?」
アリアのそばへ飛んでゆき、くるくるとアリアの頭上を飛び回るカファール。ちゃっかりアリアと仲良くなっていた。
「カファールさんを描いている所で……あれ?」
スケッチブックから顔を上げ、アリアが目をぱちくりとさせた。描いていたはずのカファールたちの姿が、そこに見当たらなかったからだ。
「おいらはここだよ〜」
カファールはアリアの目前へ回り込み、くすくすと笑った。
●ヴィジョン大決戦・完全版【4B】
エルフの男、イリアスはまだ男湯で温泉を酒樽に詰めていた。飲用の分も別にきちんと必要数確保し、十分過ぎる量を馬車に積み終えて。
「よーし、こんなもんやろ。ドレーク、お疲れはん」
ヴィジョンをカードに戻し、大きく息を吐くイリアス。一仕事終えた後の充実感は大きい。
(飲用は街へ持って帰ったその足で、売りに回った方がええやろな。味が落ちたら何やし、相手に足元見られるのもかなわんしな) 心の中であれこれ算段するイリアス。本当に、根っからの商売人である。
「わ〜、こっちの方が広いねー☆」
その声に算段を中断し、振り向くイリアス。いつの間にかシフールが1人、男湯に飛び回っていた。
「うん、何や?」
思わずシフールに声をかけるイリアス。シフールは飛び回るのを止めて、イリアスに答えた。
「ナンヤじゃないよ、おいらカファールだよ」
両手を腰に当てて胸を張るカファール。
「そうか、カファールさんか。わいはイリアス言うんや」
「んじゃ、イリりんだね☆」
ニパッと笑うカファール。
「ねえねえ、イリりん。おいら『隠れた名盗』さん探してるんだけど、どこに居るか知らない?」
「はあ? 『隠れた名湯』やと分かるけど、その言い方やったら人やろなあ? 悪い、わいは分からんわ」
イリアスはそう言って、頭をぽりぽりと掻いた。
「そっかー、なら仕方ないね」
しゅんとするカファール。
「カファールさん、どこですか〜」
男湯の外から女性の声が聞こえてくると、カファールの顔がぱっと明るくなった。
「あっ、アリりんだ☆ アリりん、おいらはこっちだよー!」
叫ぶカファール。どうやらカファールの仲間が向こうに居るらしい。
「アリりんて、仲間のシフールなんか?」
尋ねるイリアス。カファールが首を横に振って今から答えようとした時、湯煙の向こうから人影が見えた。シフールではない、人間の女性の姿だ。それも、一糸まとわぬ姿の。
「カファールさん、描きかけで飛んでいっちゃ駄目……」
スケッチブックを片手にカファールの後を追ってきたアリアと、元から男湯に居たイリアスの目が合った。
「きっ……」
アリアが一瞬息を吸った。イリアスの顔は強張っていた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
黄色い叫び声を上げ、湯舟へ飛び込むアリア。そしてどこからともなくカードを取り出し、エンジェルのヴィジョンを召喚した。
「ま、待ちいな! ここは男湯やっ! 話せば分かるっ!!」
「問答無用っ!!」
慌てふためくイリアスにエンジェルが襲いかかり……羽で往復ビンタをし始めた。
「うっ! ぶっ! はうっ! うわっ!」
呻き声を上げるイリアス。もちろんやられっぱなしという訳にはいかない。イリアスもドラゴンのヴィジョンを召喚し、エンジェルと対峙させた。
カファールが少し離れた場所で、そんな2人の様子をきょとんと見つめていた。
●原因を作ったのは【5A】
「遅いぞ、カファ」
温泉の出入口で待っていたラルラドールは、ようやく出てきたカファールにそう言い放った。
「ラルりん、顔赤いよ?」
ラルラドールを一目見て、カファールが言った。ラルラドールの身体は、温泉と酒との相乗効果でほかほかとしていた。顔だけでなく、浴衣から覗いている肌が全て赤い、
「ああ。ちょーっとのぼせたかもな」
額に手を当てるラルラドール。……酒のせいのような気がしないでもないのだが。
「ねえねえ、ラルりん。天使とドラゴンの大決戦って知ってる?」
カファールが無邪気に尋ねた。
「? 何だそりゃ?」
ラルラドールがきょとんとした表情を見せた。
この後食事に行った2人は、カファールの言葉を意味を教えられることになる。そしてその原因を作ったカファールは、ラルラドールにまたもや叱られるのであった――。
【温泉へ行こう☆ おしまい】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 整理番号 / PC名 / 性別
/ 種族 / 年齢 / クラス 】
【 7315 / カファール・テンペスト / 女
/ シフール / 18 / ヴィジョンコーラー 】
【 5565 / ラルラドール・レッドリバー / 男
/ ヒュムノス / 21 / 戦士 】
【 5583 / アリア・リメル / 女
/ ヒュムノス / 20 / ヴィジョンコーラー 】
【 7411 / イリアス・ファーレロン / 男
/ エルフ / 32 / ヴィジョンコーラー 】
【 7204 / メリッサ・ローズウッド / 女
/ エルフ / 23 / 風喚師 】
【 5423 / 天本・美優 / 女
/ 地球人 / 22 / 地球人 】
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■ ライター通信 ■
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・『白山羊亭冒険記』へのご参加ありがとうございます。担当ライターの高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、この冒険の文章は(オープニングを除き)全12場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通されると、全体像がより見えてくるかもしれませんよ。
・『白山羊亭冒険記』では、高原は明るい冒険を出してゆこうかと思っています。温泉が登場する冒険は、これからも度々出てくるかもしれませんよ。
・今回は面白いことに、ファンシィウッズ・フレイアース・アクアシーズと各々2人ずつにくっきりと分かれていました。ですので構成時に多少考慮してみました。また、皆さんのOMCイラストに1度目を通してから書いております。
・今回のメインは温泉でしたので、温泉に入っている場面を中心に描いています。本文では触れられていない行動もあるかと思いますが、ほぼ問題なく行われていますのでご心配なく。
・カファール・テンペストさん、楽しいプレイングありがとうございました。プレイング中、顔文字で踊られていましたので、本文でも踊っています。今回カファールさんのプレイングで、色々と影響が出ています。
・それでは、また別の冒険でお会いできることを願って。
COPYRIGHT © 2008-2024 高原恵ライター. ALL RIGHTS RESERVED.
この小説は株式会社テラネッツが運営するオーダーメイドCOMで作成されたものです。
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