どらごにっくないと

カウンターカウンターカウンター

ライヴへ行こう

  • 2008-08-11T22:59:40
  • 桜紫苑MS
【オープニング】
 いつものように扉を開けて、いつもの席に向かう。
 毎日繰り返す、いつもと同じ日常。
 だがしかし、何かが心に引っ掛かる。
「‥‥‥‥‥」
 店内を見回してみる。
 この翠月茶寮新東京店を任されているうえいとれすのイレーネは、いつもと変わらず無愛想にカップを磨いている。
 バイトのファンタズマ、セシルは何が楽しいのかきゃっきゃと笑いながら床掃除の真っ最中。客がいる時ぐらい掃除はヤメレと思うのも込みで、これもいつも通り。
 後は、自分と同じ常連達がそれぞれの定位置でくつろいでいる。
 窓際の日当たりのよい場所を陣取っているのは、京都メガテンプルムの総指揮官、プリンシパリティの愛皇アンデレだ。戦えばすンごい‥‥らしいが、普段の彼は優しい神父だ。
「‥‥‥‥神父?」
 また、何かが引っ掛かった。
 ゆっくりと、視線を戻す。
 鉢植え。
 白いテーブル。
 シュガーポット。
 湯呑み。
 大量のプラスチックの棒。
「プラスチック?」
 細いもの、太いもの、うっすら色がついているもの等々、テーブルの上には用途不明なプラスチックが大量に置かれていた。
「アンデレ、これはい‥‥‥‥」
 尋ねようと顔を上げて、そのまま硬直する。
 黒い服はいつもの神父服だが、その上にじゃらじゃらと踊っているのは十字架ではない。いや、正確に言うならば十字架「だけ」ではない。いつも彼が身につけているシンプルな形の十字架はゴテゴテと装飾が施された十字架に埋もれていた。
「アンデレ‥‥それは一体‥‥」
「似合いますかぁ?」
 問われて口籠もる。
 腕にはトゲバングル、頬にはタトゥーと、到底神父とは思えない姿を似合うかと尋ねられても‥‥。
「アンデレ様、ライヴに行くんだよねー」
 モップを滑らせていたセシルがアンデレに代わって答えをくれた。
「ライヴ‥‥」
「そ。なんかね、街を歩いていたらナンパされて、ライヴに誘われたんだってー」
 ひゅーひゅー♪ おさかんだねー♪
 それでいいのか聖職者‥‥。
 囃し立てるセシルの声を遠くに聞きながら、ガラスの向こうに広がる明るい世界へと視線を飛ばす。
「それで、依頼なんだけど」
 突然、耳元に聞こえて来た声に飛び上がる。
 カウンターの向こうでカップを磨いていたセシルが、いつの間にか、背後に忍び寄っていたのだ。
「京都から。‥‥あの浮かれ大天使が羽目を外さないように見張ってろってさ」
 手の中にねじ込まれたのは、チラシとチケット。
 そこには、バンド名らしきアルファベットの羅列と、ライヴハウスの名と日時とが記されてあった。
「ぼ‥‥暴走されたら、さすがに止められんぞ」
 相手は腐ってもプリンシパリティである。
 狭いライヴハウスでテンションが上がり、制御もなしに暴れ出す‥‥なんて事態になったら、いくら魔皇でも止められない。
「だから、そうならないように見張ってろってこと」
 じゃ、よろしく。
 あっさりと告げて手を振って、セシルはカウンターの向こうへと戻っていく。
 周囲の者達の手元にも同じチラシとチケットがある事に気付いたのは、それから数分の後の事であった。


【本文】
●ぎょぎょ!?
 ピーカン晴れの空の下、ナウなヤング達がフィーバーしている街の一角で、ウキウキルンルンのギャルが列を作っていた。
 なんのかんのと文句をつけつつもノリノリな主、山田ヨネによって飾り立てられた逢魔、マーリはその様子を一目見るなり、絶句した。
 綺麗にカールした髪、バサバサと音を立てそうなまつげに黒く縁取られた目、唇はグロスでふっくら艶やかに色づいている。そして、彼女達が身に纏っているのは、流行のチェニックや姫袖のワンピースなどなど。
 頭の先から爪先までの真っ黒な正統派パンクルックの者など1人も存在しない。
 彼女の仲間達を除いては。
ーヨ‥‥ヨネ様、我々は完全に浮いてます‥‥!
 開場待ちの列にならぶ女性達の視線が痛い。
 救いを求めるように、マーリは主の姿を探した。しかし。
「まったく、ちったァ歳と立場ってぇモンを考えなよ、アンデレの爺さん」
「おや、そういうヨネさんこそ年寄りの冷や水じゃないですか」
 アンデレの言葉に、ヨネはむっと顔を顰めた。
「馬鹿をお言いでないよっ! アタシはまだ二十歳なんだからね!」
 トゲトゲジャケットを着込んだヨネの啖呵が、街の喧騒を貫いて轟き渡る。何事かと振り返った少女が、ぎょっと顔を引き攣らせ、そっと一歩半、離れていった。
 あああ‥‥。
 更に視線が痛い。
 マーリは頭を抱えた。
 しかし、ここで挫けていては魔皇の逢魔は務まらない。
「ヨネ様、こちらへ‥‥」
 ライヴが始まる前に着替えなければと、ヨネの袖を引いたマーリは、次の瞬間、凍りついた。
「おや、マリちゃん! マリちゃんもよぉーっく似合っているよ! 今度、その格好で保育園へお迎えに行くってのはどうだい?」
 子持ち‥‥子持ちがあの格好‥‥。
 背後から囁く声がさざなみのように押し寄せてくる。
 がくりと膝をついたマーリの気持ちも知らず、ヨネはひょひょひょと高笑った。
「いやあ、楽しみだねぇ! アタシャ、ビートルズが来日した時にゃ興味が無くってねぇ。今思えば勿体ない事をしたよ」
「‥‥黒船来訪じゃないのか?」
 ぼそり呟いた夜霧澪の頭に、ヨネの渾身の一撃がヒットした。表情も変えず建物の壁へとめり込んだ澪に、遠巻きに観察する事に決めたらしい少女達の間から「見た目はいいのに‥‥」という呟きが漏れる。
「おっちゃーん! アンデレのおっちゃーーーんっ!!」
 そんな少女達の列を掻き分け、ぶんぶんと手を振る娘が1人。
「おっちゃん! えーん、久しぶりーっ!」
 勢いのままアンデレに飛びつこうとした逢坂薫子を阻んだのは、小さくて暖かなもの。
「あれ?」
 ゆっくりと視線を下げる。
 神父服の胸につり下げられているシルバーアクセサリー。ドクロ、逆さ十字。パツンパツンでヘソ見えな革ズボンのベルトバックルまで顔を歪めて絶叫する死神だ。そして、その下。
 つやつやの髪を両サイドで結んだ少女が、むぅと頬を膨らませて薫子を見上げていた。
「えーと?」
「じじさままきの。めっ」
 んーと?
 額に指を当てて薫子は考え込んだ。少女が発した言葉を分解し、再構築して、その意味を探る。
 薫子の様子を見守る仲間達の耳には、かの有名なトンチ小坊主のシンキングタイムのBGMが聞こえているに違いない。やがて、薫子はぽんと手を叩いた。
「じじさま(は)まきの(もの)。(だ)めっ」
 謎を解いた探偵のように、薫子は高らかに翻訳した言葉を告げた。
 ぱちぱちとまばらに起きる拍手に軽く手を挙げることで応え、薫子は膝を屈めて少女に目線を合わせた。
「まきちゃんって言うんだぁ。可愛いねぇ‥‥って、じじ様!?」
 佐嶋真樹の頭を撫でようと手を伸ばし、はたと気付いてアンデレを振り仰ぐ。
「おっちゃんっ!? いつのまに孫なんか作ったんだっ!?」
 違う。
 違うよ‥‥。
 緩く頭を振る仲間達に気付かず、薫子は真樹を抱き上げてアンデレへと詰め寄った。
「よく見れば、どっか似てるかも‥‥。おっちゃん、ふけつーーーーっ!!」
 ぶるんぶるんと頭を振るのに合わせて、抱えられた真樹もぶらぶらと揺れる。そんな薫子の暴走を止めたのは、喧嘩相手を取られたヨネであった。
 ひょいと飛び上がったかと思うと、薫子の頭をぺしりと叩く。
 今度は女の子が相手なので軽く。ヨネは女子供に優しいのだ。
「ていっ! まったく、最近の若い子は落ち着きがないったら」
 皺だらけの指をびしりと薫子に突きつけ、ヨネは厳しく激しく薫子の素行を非難した。
「そもそも、なんだいっ! その格好は! 若い娘がももひき丸出しで恥ずかしくないのかいっ!」
「これはレギンスだよッ!」
 敢えて突っ込むまいと傍観を決める仲間達と、周囲に迷惑だからと介入すべきかどうかで悩む開場待ちの少女達。
 誰も入り込めない言葉の応酬を頭上に聞きながら、真樹は薫子の手から離れて、えいっと飛び降りた。だが、無事に地面へは降りたものの、勢い余ってころんと転がってしまう。
「あらあら。大丈夫ですか」
 優しい声とともに、柔らかくて温かな手が差し伸べられて抱き起こしてくれる。その手は、どこか母に似ていた。
 見上げれば、頬に黒い星を貼り付けた女性が静かに笑っていた。
「‥‥うに? おねえさんも、ぐれごーる?」
「いいえ。私は魔皇ですよ」
 服についた埃を払って、彼女は困ったように首を傾げた。
「何度かお会いした事もありますけれど‥‥今の私では分からないかもしれませんね。‥‥私は、御神楽永遠というのよ」
「とわおねえちゃん」
 はい、と微笑んで、永遠は周囲を見回す。幼い真樹が1人でこのような場所に来ているとは思えない。あの真面目な文学青年風の逢魔がどこかにいるはずなのだが‥‥。
「真樹ちゃん、思兼さんは一緒ではないの?」
 ちょんと首を傾げて、真樹は列の先頭付近を指さした。
「‥‥え」
 永遠が絶句するのも無理はない。
 眼鏡が知的な真面目文学青年は、トレードマークの眼鏡をどこかに忘れ、ヘッドフォンを耳に、爪先でリズムを取りながら少女達の中に自然に溶け込んでいたのだ。しかも。
「最前列‥‥」
 チケットの整理番号順に並んでいる列の、一番前というのは一体どういう事だろうか。
「あの、思兼さん?」
 真樹の手を引き、永遠は逢魔の元へと歩み寄った。肩を突くと、思兼は怪訝そうに振り返った。
「はい? ああ、貴女は。お久しぶりです」
 ヘッドフォンを外し、思兼は永遠へと向き直ると丁寧に頭を下げた。
 そんな所は確かに以前会った通りの逢魔だが、見た目が違い過ぎる。
 革ジャンにパンツ、ゴツいブーツの永遠も人の事は言えないが、さすがに思兼の変貌には驚いた。
「お、驚きましたわ。印象が違い過ぎて‥‥」
 ぎこちない笑みを向けた永遠に、思兼は小さく笑って視線を宙へと向ける。
「そうですか? これでも昔はやんちゃをしたものですよ。盗んだバイクで夜の帳を裂いて走り、校舎のガラスを叩き割ったり‥‥ええ、そんな時代もありました」
「は‥‥?」
 過ぎ去った時間を懐かしむ思兼に、何と返せばよいのだろう。
 永遠は悩んだ。
 それは良い思い出ですね? いや、絶対に違う。
 若気の至りですね? そんな事を言えば彼を傷つけてしまうかもしれない。
「さて、そろそろ入場ですね。真樹さま、セシルさんの言う事を聞いて、良い子にしているのですよ」
「うに‥‥。まき、らいぶ、みてみたかったな‥‥」
 項垂れた真樹の頭をひとなでして、思兼は微笑んだ。
「小学校に入るまでの我慢ですよ」
 小学校でいいのか!?
 仲間だけでなく、無関係な少女達からも一斉に突っ込みが入る中、当の本人達は至って真面目に指切りげんまんで約束を交わしたのだった。

●気がつくとそこに
 開場が始まったからと言って、すぐに入場出来るわけではない。
 狭い階段に並びながら、鳳は辟易したように魔皇を振り返った。
「なあ! 本業サボってこんなトコにおるてバレたら、また秘書のねーちゃんに盆で殴られるんとちゃう?」
 鳳の大声に、近くにいた少女達がざわめいた。
 彼女達が自分を品定めしている事を察して、ジャンガリアン・公星を大きく溜息をつく。
「顔よし、スタイルよしのうえにヤンエグときたら、女の子も見過ごす事は出来ないって感じですねぇ。ふっふっふ‥‥」
「‥‥アンデレ様」
 さらにがくりと肩を落とす。
 ヤンエグが死語である事を指摘する気力も起きない。
「しかし、どうしたんでしょうね。何やら皆さんと我々の格好に‥‥こう、溝があるような気が‥‥」
 やっと気付いたかと、リアンはこめかみを押さえつつ頷いた。
「それはそうでしょうね」
「はて。おかしいですね。これが正統なライヴ鑑賞服だと書いてあったのですが」
 どこで何を読んだのか。投げやりに、リアンはその出典を尋ねた。
「それは当然、リューヤの本です」
 聞くんじゃなかった。義弟であり、一応は恩師でもある大天使の趣味はいったいどこまで行くのだろうか。
「ライヴにも色々とジャンルがあるんですよ。彼女達の服装は、今日の主役の好みに合わせたものでしょうね」
「好み‥‥」
 改めて、アンデレは並ぶ少女達を見た。
 そう言えば、心なしかワンピースとノースリーブ率が多いような。
「男性2人組、曲はロックからバラードまで幅広く、バックバンドの「血の紅玉」も‥‥」
 淡々と解説をしていたリアンの言葉が途切れる。
「「?」」
 口元を押さえて俯いたリアンに、鳳とアンデレは顔を見合わせた。
「リアン? どないしたんや?」
「ちょっと思い出した事が‥‥いや、きっと思い過ごしだ」
 珍しく歯切れの悪いリアンに、鳳が口を尖らせるのと立ち止まった澪の背にぶつかるのとは同時だった。
「な、なんや!?」
 立ち尽くす澪の視線を追ったリアンがあ、と声を上げる。
「小百合ちゃん」
「澪さん!? どうしてここに!?」
 階段の下、小さな販売スペースでグッズを売っていた澪の逢魔、小百合が突如現れた魔皇の姿を見て、眉間に皺を寄せた。
「どうしてって言うのは、こっちのセリフやで」
 呆れた口調の鳳に、小百合はえへへと舌を出す。
「アルバイトです。良かったら記念にいかがですか? ロゴ入りTシャツにタオル、リストバンド、タトゥーシールなんてものもありますよ」
 手早くグッズを並べた小百合の「買って下さい」光線は、主の澪を通り越してリアンに注がれていた。
「ま、当然やな。リアンの方が金持ってるんやし」
 む。
 澪の眉間にも皺が寄った。引き結ばれた口元が、僅かに歪む。
「‥‥アンデレを見張るのが任務だが‥‥」
 呟き、澪は財布を取り出してグッズを指さしているリアンと小百合の間に割って入った。

●狂乱の宴
 襲いかかってくる音にふらりとよろめいた永遠を支え、天舞は周囲で飛び跳ねている観客から主を守る。
「想像していた以上ですね!」
「申し訳ありません! 姫! よく聞こえません!」
 隣にいるのに、怒鳴り合わないと声が聞こえない。
「天舞! アンデレ様を!!」
 耳元で告げられた永遠の言葉に、天舞は渋い顔をした。
 アンデレは薫子と一緒に彼らの前の列でノリまくっている。
ーアンデレ殿は気がお若いでござるのぅ‥‥。
 思わず感心した天舞は、はたと我に返った。今はそれどころではない。
 主の命ではあるが聞く事は出来ないと、心の中で永遠に頭を下げる。アンデレの事は仲間に任せ、この狂乱から永遠を守らなければならない。後は頼んだと、天舞は仲間達の居場所を探す。
 アンデレと薫子は、彼らの前の列だ。
 他の者達は、と視線を巡らせて、天舞は言葉を失った。
 最前列で拳を振り上げているのは、真樹の逢魔、知的で真面目で若いのに落ち着きがあると評価していた思兼だ。その隣には、ぴょんぴょんと年甲斐もなく飛び跳ね、踊り狂っているヨネがいる。
「‥‥歌い手も驚いておられるだろうな‥‥」
 ステージ上で汗を飛び散らせて歌うアーティストに同情しつつ、残りの男衆の姿を求めて辺りを見回した時、密集‥‥鮨詰め状態の観客を掻き分け、満身創痍となった澪が彼の体の陰へと飛び込んで来た。
「くっ! ここは一体何の決起集会だっ!」
 とか言う彼の両手には、売店で買わされたコンサートグッズがしっかりと抱えられている。
「ちょっ、リアン! どないしたんや!?」
「会社の女の子がいたっ!」
 続いて、リアンと鳳が避難して来る。
 体が大きく、厳つい天舞の間合いに侵入してくる命知らずはさすがにおらず、ちょっとした絶対不可侵領域になっていたのだ。
 そうこうしている内に、ライヴは終わりの時を迎えたらしい。
 歓声が一際大きくなり、興奮しきった観客が狂ったようにサイリウムを振る。それは、アンデレとても例外ではない。
「あ‥‥」
 だが、永遠はその変化を見逃さなかった。
 アンデレが色が褪せ、光も弱くなったサイリウムをちらりと見て、突然に降ろしたのだ。
「いけないっ!」
「姫!」
 制止を振り切り、永遠は、天舞の絶対不可侵領域から飛び出した。
 彼女が振り上げるのはサイリウムではなく、友から渡されたハリセン。
 そして‥‥。

●任務の行方
「じじさまー」
 お利口に待っていた真樹を抱き上げるアンデレを見ながら、彼らは強い虚脱感に襲われていた。激しい一時は、魔皇をも消耗させてしまったらしい。
「なんだいなんだい、皆、だらしないねぇ」
 お肌つやつや(当社比1.1倍)になったヨネに呆れられても、何の反論も出来ない。
「やはり、俺は‥‥落ち着いて聞ける音楽会の方が向いているようだ‥‥」
 ボロ雑巾のように疲れ切った澪の呟きに、リアンが意味ありげに笑う。しかし、リアン自身も疲れを滲ませている。社員と鉢合わせしないようにと気を遣いながらのライヴは、精神的にも身体的にも大変だったらしい。
「おじさん、これから一緒にカラオケ行かなーい?」
「カラオケ! いいですね!」
 任務終了と息をついた彼らの耳に、聞き逃せない会話が届く。まだ、任務は続いていたらしい。
「徹カラしよう! 徹カラ!」
 いつの間に意気投合したのか、アンデレが数人の少女達に囲まれていた。
「まずい。このままアンデレ様をお持ち帰りされては!」
 発信器は忍ばせてある。だが。
 焦ったリアンが腕を伸ばした。しかし、少女達に阻まれてかなわない。
 最後の最後で任務失敗かと思われたその時ーーー。
「痛いー。おっちゃんのチェーンに髪がひっかかったよー」
「じじさまー、まき、かえるー」
 薫子の引き留め作戦と、真樹のよい子のおねだりが炸裂した。
 これには、アンデレも逆らえなかったようだ。二言、三言、何かを告げると、少女達の一団がアンデレ達から離れていく。
 どうやら、何とか、任務は終了となりそうだ。
 ほっと胸を撫で下ろして、ふと思い出す。
「そういえば、思兼はどこへ行ったんだろう‥‥?」
 1人足りなくなった仲間達の間を、冷たい風が吹き抜けていった。
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この小説は株式会社テラネッツが運営する『神魔創世記 アクスディアEXceed/セイクリッドカウボーイ』で作成されたものです。
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